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第1研

3  部  作

第1章  私の章

今日、私の好きなあの人と同じ歳になった

あの人は私の事は知らないけれど
わたしはあの人の事を知っている
もっともっと知りたくて、
あの人をずっと追いかけて
やっと追いつく事が出来た

あの人と同じドキドキを確かめたくて
あの人と同じ想いを噛み締めたくて
いつもあの人を 心のキャンバスに描いていたの

あの人の想い あの人の優しさ
あの人の強さ あの人の弱さ
あの人の楽しさ あの人の辛さ
全部、全部確かめたくて
全部、全部抱きしめたくて
あの人をずっと描いてきたの

私の好きなあの人に追いつきたくて
私の好きなあの人を感じたくて
私の好きなあの人と同じ歳になる事で
私の心と全身で いっぱいに感じたくて
今日のこの日が来る事を
ずっとずっと待っていたの

そして今日、私の好きなあの人と同じ歳になった





第2章  道潤の章

『 わたしの好きな人
                                    道 潤

 潤の好きなその人は、おっきくて、強くて、そして優しくて、
 いっつも潤といっしょにいてくれます。

 でもわらったところは、見たことがありません。
 いつもだまって、潤のいうことを聞いてくれます。
 友だちは、変なのとかこわいとか言うけど、潤は大好きです。

 ちっちゃな時から、ずっといっしょにいてくれました。
 ずっといっしょにあそんでくれました。
 潤が病気のときも、こわいゆめを見たときも、しかられて泣いちゃったときも、
 ずっと、ずっとそばにいてくれました。
 
 そしてこれからもずっといっしょにいてくれます。
 潤がおっきくなっても、いっしょにいてくれます。
 だから潤はその人が大好きです。
 だから潤はおっきくなったら、
 その人のおよめさんになりたいです。

 白竜、大好きっ!』

「うふっv」
その作文を読み終えて、彼女はニッコリと、そして優しく微笑んだ。部屋の掃除をしていて、偶
然本棚で見つけた自分の幼い頃の文字に、昔も今も変らぬ想いをゆっくりと重ねてゆく。
その作文は小学校の宿題だった。でも提出はしていない、自分だけの秘密にしたくて。
提出した文には誰の事を書いたのか、もう覚えてはいない。

「お〜い、かたづけ終わったのか?」
「あ、うん」
「じゃあ、お茶にでもしないか?」
「わかったわ」

声を掛けてきた、作文の『あの人』に、優しく返事をすると、彼女は大切そうに作文を折りたた
み、そうっと胸にあてて眼を閉じ、ほうっとため息をつき、呟やく。
「私の初恋は、今もずっと続いているのね」
そして作文を本棚の元の場所に置き、彼女は元気よく『あの人』の元に駆け出していった。





第3章  李白竜の章

テレビを見ていたら、懐かしい街角が出てきた。
かつて俺はあそこにいた。あそこに住んでいた。
あそこで妻と子どもと暮らし、あそこで仲間と仕事をしていた。

でももうあそこには戻れない。戻ろうとも思わない。
懐かしさはある。でも懐かしいというノスタルジックだけで、帰りたいのではない。
戻ってもどうしようも無い事だと解っているし、鬼籍に入った自分が戻ったところで妻と子ども
に迷惑をかけるだけだ。
二人には新しい暮らしを無事平穏に過ごして欲しいだけだ。

それよりも今の自分には大切な人がいる、大切なモノがある、大切な場所がある、そして大切な
想いがある。
それを護っていかなければならない。それが一番重要で必要な事だ。
そのために自分はいる。生かされて、いや生きている。
たとえ鬼籍の身であったとしても、話し、笑い、悲しみ、そして想う、だから生きている。
たとえそれが必然的に、否応なしにそうされたとしても、生きていること、生かされていること
に感謝している。

これからはその想いと共に、その人のため、その人の側で、ずうっと一緒に生きていきたい、生
きていかなければならない。
その人を悲しませたくは無い。その人を泣かせたくは無い。その人に辛い目に逢わせたくは無い。
その人の笑顔を見ていたい。その人の笑い声を聞いていたい。その人の楽しそうな姿を見ていた
い。その人と共に幸せをかみしめていたい。その人の温もりを感じていたい。

好きだよ潤…





第1研