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第1研 00 01 03 04 05

2.幼馴染


「お、もうこんな時間か。綾これを」
 俊は時計を見てそう言うと、胸のポケットから何ら取り出し綾に渡した。
「はや? これは今日俊さんと行くはずの『花公園』の入園チケットじゃないですか」
 それは近所に開園した植物公園のペア招待券であった。
「せっかくだから、真夜ちゃんと行っておいで。僕は留守番をしてるから」
「でも、いいんですか?」
「もちろん、綾とはまたいつでも行く事が出来るだろう。今日はせっかくの幼馴染との再会じゃないか、遠慮しないで行っといで」
 そう言うと俊は綾の頭に手をポンとのせ優しく撫でた。撫でられた綾は照れながらも
「はい! 俊さんありがとうございます」
と元気一杯答えると、真夜の手を取り
「真夜ちゃん行こう!」
と満面の笑みで真夜を誘った。真夜は少し考えたのち
「わかった、行こう綾姉ぇ」
とこちらも満面の笑みで答えた。
 そんな二人を眺めてた俊であったが、ふと大変な事に気付く。
「待て! 綾」
「え? 何ですか?」
 何事かと振り向く二人の姿を見詰めて、ため息をつき
「まさかその格好のまんま行くんじゃないだろうな?」
と二人の服装を指差した。
「あっ!… てへへへへへ…」
 綾はその事に気付き照れ笑いをしたが、真夜はきょとんとした顔で
「何かおかしいですか?」
と聞き返してきた。二人とも忍装束だったのである。

 俊は綾が来た時の事を思い出した。綾も最初は忍装束で街中を歩いていたのだ。その理由が
『普通の格好だと忍とわからない』
であった。では忍とばれるとどうなるのか尋ねると
『里の者に粛清される』
と相反する答えが返って来て、一瞬思考が遠くに飛んだ事を思い出したのである。その後、綾が俊と同じ学校へ通うようになっ
て、自宅以外では
忍装束を着ないようになった。

「はぁ、仕方ない。綾、お前の服を貸してあげろよ。ただし、忍者服ではなく、普通の洋服だぞ。それと、僕が作った弁当持って
行っていいから」
「ほえっ? 本当ですか? 真夜ちゃん、俊さんの作ったお弁当って美味しいんですよ。よかったね」
「あ、ああ」
 真夜はそう返事をすると、きゃぴきゃぴ喜ぶ綾を見詰めてこう思った。
『綾姉ぇ、相変らずケーキ以外の料理駄目なんだな…』


 キャアキャアと女の子達が服選びに興じている間、俊は台所で洗い物をしていた。
「俊さ〜ん、用意出来ましたよ」
 綾の声に振り向いた途端
「ぶっ!!」
と吹き出してしまった。綾は普通の服であったが、真夜が何故か、しかも綾のセーラー服を着ていたからである。
「あ…あのねぇ、真夜ちゃん…」
「何か変ですか?」
 何事も無かったように真夜は俊に聞き返して来た。
「いや、その服はちょっと…」
「そうですか? 綾姉ぇが似合うって言ったし、それに…」
「それに?」
「この服は最強の武器だって…」
「最強の武器? …まぁ、ある意味そうだけど、何処でそんな事を?」
「以前、里に帰ってきた忍の者が言ってたのと、ラジオで言ってました」
「はぁ… 綾といい、真夜ちゃんといい、君達の里って… とにかく、その服はやめた方がいいよ」
「そうですか。でも綾姉ぇが可愛いってせっかく言ってくれたので」
「綾〜〜〜〜〜!」
 俊は慌てて綾を探したがその姿は無かった。ただ、今まで綾が居た所の壁が何故かこんもりと膨れ上がっていたのである。
「ほう、そう来たか」
 膨れ上がる壁に向って俊が歩き始めた。
「あ、俊殿お待ちくだ…  きゃっ!」
 俊を止めようとした真夜であったが、慌てたためか足がもつれてそのまま俊の方へ倒れて行く。
「俊殿ーー! よけてくださーーい!」
「え?」
 俊が振り向いた瞬間、
“ゴツン!”
と鈍い音がして、真夜と俊のおでこが正面衝突を起こし星が飛ぶ。そして真夜はその反動で膨れた壁へと飛ばされて、壁に突
っ込んで行く。
「みぎゃっ!」
 真夜が膨れた壁に頭から突っ込んだ途端、壁が叫び声を発して弾け、中から綾が転がり出てきた。綾は雲隠れの術で隠れ
てたのである…と言
っても壁と同じ模様の布で壁に化けていたつもりに過ぎないが…。
「あいたたたた…」
 額を抑えながら俊がゆっくりと起き上がり視線を壁に向けると、頭の周りで星がぐるぐると廻り、なると状の目をした真夜が、ふ
らふらと柱によろけ
て行くのが見えた。
「あ! 危ない!」
 俊の叫びも間に合わず、真夜はおもいきり正面から
“ドン!”
と柱へと衝突し、そのまま後ろへとスローモーションで倒れて行き、壁の前でやはり頭の周りで星がぐるぐると廻る綾の上へと倒
れこんだ。
「お…おい、二人とも大丈夫か?」
 慌てて二人の元へと駆け寄るが、二人仲良く気絶して星とたわむれていたのであった。
「あ〜あ」
 俊はため息をつくと、二人を介抱すべく部屋へと運んでいった。


 俊のベッドに二人は仲良く寝かされていた。おでこにはお決まりの×印のが絆創膏が貼られている。そんな二人を介抱しな
がら俊は思わず吹き
出してしまう。
「ぷっ! やっぱり幼馴染だな。絆創膏の位置が全く一緒じゃないか。でも真夜ちゃんってしっかり者に見えるけど、案外… ク
ックックックッ…」
 必死に笑いを堪えていると真夜が目を覚ました。
「あいた〜 私いったい…」
 手をおでこに当てて、ゆっくりと顔を傾けると、そこに必死で笑いを堪える俊の姿が目に入った。
「あっ!」
 そう叫ぶとベッドから飛び起き、俊の前に正座すると、
「俊殿! すみませんでした!」
と両手をついて頭を下げた…下げた途端、今度は床で頭を思いっきり打った。
“ゴン!”
「いったーーーーーい!」
 慌てて両手でぶつけた頭を抑え、涙顔で顔を上げる。その顔を見た途端、俊は我慢の限界に来てしまう。腹を抱えて笑い出
してしまったのであ
る。
「ぶっあっはっははははははははは!」
 大笑いする俊の前で真夜は頭を抱えたまま、真っ赤な顔をしていたが、やがて
「……………、うふ、うふふふふふ」
と、笑い転げる俊につられて笑い出してしまった。
「うにゃ〜〜 何がおかしいんですか?」
 二人の笑い声で綾が目を覚ます。
「お、綾、気が付いたか」
「あ、ご主人さま、おはようございます。あれ? 真夜ちゃん?」
「な〜にを寝ぼけてるんだ」
「もう綾姉ぇったら…」
「………ほえっ?」
 真夜はしばらく考えこんでいたが、やっと思い出したようで、ベッドから飛び起きると
「あ〜っ! ご主人…じゃなくて…俊さん、ごめんなさい!」
と真夜同様、俊の前で両手をついて頭を下げたが、やはり床で頭を思いっきり打った。
“ゴン!”
「あう〜〜〜〜!」
 その様子を見て、俊と真夜は今度は二人揃って笑い転げる。
「もう、笑らわないでください!」
 頭を抱えたまま頬を膨らませる綾に俊は
「ごめん、ごめん。綾、もう怒ってはいないから、今度はちゃんとした服を真夜ちゃんに着せてあげろよ」
と言って立ち上がり、
「でもホント、仲の良い幼馴染なんだなぁ。うぷっ! ぷぷぷぷ…」
と思い出し笑いをしながら部屋から出て行った。
 二人とも顔を真っ赤にしながら俊が部屋を出るのを見届けると、今度は向き合い
「へへへへへ…」
「うふふふふ…」
とにこやかに笑いあった。


「俊さ〜ん、今度はちゃんと用意ができましたよ」
「そうか」
 再び着替えてきた綾と真夜を俊が出迎えると、今度は真夜は普通の服装であった。
「うん、これならよし! じゃあ楽しんでおいで」
「はい!」
「ありがとうございます」
 俊が玄関まで二人を見送ると、真夜が出がけに
「でも俊殿、そのエプロン姿とってもお似合いですよ」
とペロッと舌を出して言った。
「え? あ、こ…これは…」
 狼狽する俊を尻目に二人は
「ではいってきまーす!」
と玄関を飛び出して行った。
「ちょっと! 真夜ちゃん!」
 玄関には真っ赤になった俊が残されたが、手を繋ぎはしゃぎながら走って行く二人の女の子を見て、
「ふぅ、仕返しされたな」
と笑顔で見送り、
「さてと、今日は天気が良いから洗濯をしなきゃ」
とエプロン姿のまま、洗濯機へと向って行った。





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